Artist's commentary
囚われのエージェントバニーさん
ハエチカ店:エージェントバニーさん
真田ななお(26・コードネーム:HARLEQUIN)の場合
「……しくじった」
店の倉庫。パイプ椅子に拘束されたわたしは、静かに息を吐いた。
両手両足は固定されている。
脱出は……簡単ではないな。
数時間前から本部との通信は途絶えている。
救出部隊の要請は届いているだろうか……。
とにかく時間を稼がなくては。
しかしなぜ正体がバレた?
潜入は完璧だったはず。
偽装経歴は住民票・納税記録まで整合。
通信はワンタイムパッド暗号。
端末は使用後に廃棄。
連絡員とはデッドドロップのみ。
……通信傍受?
いや、暗号が破られたとは考えにくい。
となると……内通者か?
本部の人間が寝返った?
…………。
誰だ!?誰がわたしを売った?
いや……落ち着け。
敵はわたしを殺さず、生け捕りにした。
つまり、目的は情報……尋問だ。
おそらく、相当手荒なものになる。
訓練は受けている。
どんな拷問にも屈しない覚悟はある。
……ある、けど。
ちらりと自分の身体を見下ろす。
…………。
よりによって、この…裏バニーの格好で……。
胸元の蝶ネクタイ。手首のカフス。申し訳程度に身体を覆うハイレグの衣装。
……せめて、上着くらい着せてくれないものか。
い、いや!
何を弱気になっている!
店では堂々と着こなしていた。
……でも。
相手はプロだ。
わたしが何に恐怖し、何を恥じるのか、徹底的に探ってくるだろう。
この姿で隠し通せるものか?
いや……
絶対に、動揺を悟られてはいけない。
たとえ、どんな苦痛や屈辱を受けようとも。
わたしが情報を漏らせば仲間たちの命も危険にさらされる。
作戦を止めるわけには行かない。
祖国の秘密を守る。それがわたしの使命。
…………。
そのとき。
カチャリ。
倉庫の扉が開いた。
……来た。
わたしは背筋を伸ばし、表情を引き締める。
どんな相手が来ようと、決して口は割らない。
その覚悟で顔を上げた。
「お待たせ♡」
…………!!
そこに立っていたのは――
いつもと変わらぬ営業スマイルの
店長バニーだった。

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