Artist's commentary
アンゲル・ローラン【FragmentTale】
崩壊世界へ入ってからどれくらいたったのだろうか?
そもそも時間もない世界、壊れた世界に”どれくらい”などないのだろう。
しかし確実に足を進めるローラン。彼の目の前に自身と同じ姿のドラゴンが現れる。それはレ・シャンソンドゥ・ローランと呼ばれる者。
世界崩壊の元凶の一つ。そしてローランがこの崩壊世界へ来た目的。
かつて誰かだった。遠い昔、孤児院では彼らだった。大きな大人の人が来て彼らは知らない場所に連れてかれた。
そして一人一人居なくなった。彼らは彼らではなくなった。そしてまたここで”彼ら”は相まみえた。
そしてローランは一人、また一人と救済していった。その度その身に禁断の力を封印していった。
その力を宿す度に気が狂いそうになる。赤の光—それは赤の魔素であるが元々は人類が造った魔素、それらの製造方法は人々の憎しみ、苦しみ、嘆き、そうした負の意識から生まれた物である。それらを取り込むことは言わば他人の魂を宿す事である。
それでも彼、ローランは前に進む。
あれからからどれくらいたったのだろうか?
全てのレ・シャンソンドゥ・ローランを救済したローラン。そして”オリジナル”と対面する。
【ローランの歌計画】によって改造され生み出された者…ローラン達の”母”である。
その姿は真っ白な姿に人間女性の身体に四つの羽と竜の顔をした異形。
世界がどのように狂ったか、それは分からない。ただ彼女が全てを憎み、崩壊させた。
神々が物質界を支配し始めた原因。彼女が存在する限り…世界はまたループし続けるだろう。
ローランは中に漂う彼女へ歩む。
世界を憎み滅ぼした者とは思えないほど静かに眠りについていた。
彼女に触れようとした瞬間ローランは激しい痛みに悶える、ローランの脳裏に母の声が響く―
『歌いなさい。全てを零に—。歌いなさい。この哀れな世界に—』
全てが支配されそうになる。彼女は全てのレ・シャンソンドゥ・ローランの統括システム。ローランも例外ではない。
我を忘れそうになるローラン、しかし視界にデュランダルが移る。多くの旅をともにしてきた剣、そしてその剣の元の持ち主の義兄との思い出が蘇る。
「そうだ…”僕”がしなければ…誰がやるんだ…」
よろめく身体を何とか立たせ、剣を咥えるローラン。
「あああああああああああああ!」
と叫ぶローラン。一心不乱に走り、剣を母に突き刺す。
その瞬間膨大な魔力が溢れ、そして力の奔流の爆発で吹き飛ばされるローラン。
そして”破壊不能”と呼ばれるデュランダルの刃が折れ、カランと地面に落ちる。
一帯が静まり返る—吹き飛ばされたローランが体を起こす。
先ほどの爆発のあった地点ではボロボロになった”母”が力なく倒れていた。その身体に依りそうローラン。
「もう終わったんだ…僕達の戦いも…物語も…だからもう…」
最後の救済を始めるローラン。”母”の怒りも悲しみも全てを身に受けるローラン。
どこか懐かしい声がする。どこか暖かい、けど悲しい記憶と共に—
全てを終えたローランの姿は”母”と似た姿になった。それは彼が全てを受け入れ、赦した証なのかそれは分からない。
自身の姿に少し困惑はしたが彼は立ち、折れたデュランダルを拾う。
「ごめんね。デュランダル…最後の仕事だ」
剣に力を籠め願う。この崩壊世界を自分諸共消滅させその、そしてそのまま神々と物質界の繋がりを断ち切る為に—
そして限界の力を全て剣を注ぎ、そして掲げ思いっきり振るローラン。
世界がガラスのように砕ける…と同時に規格外の力によってデュランダルの刃が粉々に砕け散った。
そしてローランの周りは真っ黒な空間になる。もう何もない。何も聞こえない。静かに目を閉じようとしたローラン。
しかし残ったデュランダルのガード部分が光り輝く。そして—
『プログラム起動:おはようございます。ローラン様。』
「デュランダルがしゃべった!?」
数千年使ってきた剣だがそんな機能があるとは聞かされてなかったローラン。ありきたりなリアクションしかできなかった。
『初めまして。弟様…すなわちローラン様ですね。蛇足ですが私が機能停止してる間に弟という概念は変わったようですね』
デュランダルはローランの姿を見て言う。
「違うっ!これは気にしないで!君こそ何なんだ!?」
少し赤らめるローラン。こんな世界でこんな会話するとは思ってなかったようで何だか調子が狂う。
『私の機能は”事象断裂”が起きた時に再起動するようにオルランド様からローラン様を助けるようにとプログラムされております』
オルランド…ローランはここにて義兄の名前出てくるとは思ってなかったローラン。
「兄さんの…?」
『えぇ、しかし長く話す時間はありません。今から私が【ヘブンズゲート】を開きます。その為の魔力を私に充電してください』
「わっわかった…!」
言われるがままにデュランダルに魔力を込めるローラン。
『事前登録座標にマーク…次元ポータル開きます』
目の前に空間の歪みが発生する。
『【ヘブンズゲート】生成完了…さぁどうぞ』
「う…うん」
ポータルをくぐるローラン。まばゆい光が彼を包む。
その光が晴れるとがやがやした空間にでる。どうやらどこかの町の中の転送されたらしい。
「ここは…物質界?ねぇデュランダル?」
そう言うが彼の手にあるデュランダルはもう機能停止しておりうんともすんとも言わなくなっていた。
「ありがとう…デュランダル…兄さん…」
少しの涙がローランの頬に流れる。そこに通りがかりの竜人がローランに声をかける。
「すごい見た目だね!君!まるで天使だ!どこの惑星から来たんだい?」
「惑星?僕は地球から来たけど…ここは地球じゃないの?」
それを聞いた竜人は不思議な顔で答える。
「地球?なんだ?田舎の惑星か?それにここはジ・アンサーの艦内シティーさ。知ってるだろ?」
困惑するローラン。それを見かねたその竜人が何かを察したようで話を続ける。
「わかった、君は銀河旅行初心者なんだな。私で良ければ簡単に案内するよ?」
「あっありがとう…そうさせてくれる嬉しいな。けど何かよからぬ事を思ってるなら君を消すよ?」
軽い睨みを聞かせるローラン。
「わかったわかった。そんなフォス族の様な事を言わんでくれ。私は孫武、よろしくな。しがない料理人さ」
料理という言葉を聞いてはっとするローラン。
「料理…そうだ!僕、お腹減ったな…!おじさんなんか作ってよ!作らないと消す!」
「わかったわかったわかった!とんでもない子に声をかけてしまったかな…私は…」
ふぅ、とため息を付く孫武、裏腹にワクワクするローラン。
これからの彼はどのようになっていくのか…それは何処にも記されてない…記録されてない。
これもまた断片の物語。
未来編、銀河暦におけるローラン。
全ての事柄を終えて物語のアフターを楽しんでます。神々の干渉が無くなり真の意味でのヒトの世界になった宇宙を守ることにしたローラン。いつしか彼はでこう呼ばれるようになる【ガーディアン・エンジェル】と。

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