Artist's commentary
悪役令嬢バニーさん
日比谷皇国ホテル店:悪役令嬢バニーさん
マリエル・ヴィ・ピノワール(22)の場合
「お前との婚約は、この場をもって破棄する!」
ああー、思い出しただけでも腹立たしい!
王立学園の卒業記念舞踏会。
あの忌々しい王太子は、大勢の貴族たちの前で、わたくしに婚約破棄を言い渡したのです。
隣には、あの小賢しい男爵令嬢。
わたくしが彼女に嫌がらせをしただの、王太子妃にふさわしくないだの……。
まあ、あの子が殿下にあまりにも馴れ馴れしいものですから、少々たしなめて差し上げたことはありますけれど。
婚約者として当然のことではなくて?
……それを、あろうことか国外追放とは!
このわたくし、マリエル・ヴィ・ピノワールを!
由緒正しきピノワール公爵家の令嬢を!
……許せません
許せませんわ、決して!
◇
……さて。
そんなわけで、わたくしが流れ着いたのは、極東の島国ニッポン。
身分も後ろ盾も失いましたが、幸い王宮で培った教養と社交術、そしてこの美貌は健在。
必ずや、あのクズ王子に目にもの見せて差し上げますわ!
そのためには、まず力を蓄えねばなりません。
そこで目をつけたのが――
『Tokyo裏バニー倶楽部』
政財界の重鎮から各国の要人まで、名だたる紳士たちが集うという社交クラブ。
ここで人脈を築けば、いずれ祖国の王宮にも影響力を及ぼせるはず。
ふふふ……。
なんという完璧な計画。
採用面接は合格。
まあ当然でございますわね。
わたくしの美しさを理解できない文明などありえませんもの。
◇
「それではマリエルさん、こちらが制服です。お着替えが済んだらお声がけくださいね」
「ええ。承知いたしましたわ」
更衣室で、支給された「制服」を広げます。
なるほど……これが……。
いえ、動揺などしておりません。
どのような装いかは求人広告で調査済みです。
なんでもこの国では由緒ある正装なのだとか。
……けれど。
実際に身につけてみると……。
…………。
鏡の前で、くるりと一回転。
…………。
ま、まあ……!
なかなか似合っているではありませんの。
さすがはわたくし。
どのような装いでも、気品というものは隠せませんわね。
……とはいえ。
これほどまでに肌をさらすことになるとは……。
王宮では、殿方に手を取られることさえ慎んでいたというのに……。
いえ。
この程度のことで怯んでいては、あのクズ王子に復讐などできませんわ!
そう、あの男……。
婚約破棄……国外追放……。
わたくしがこんな目に遭うとは……。
……けれど。
わたくし、諦めませんわ。
あの憎きクズ王子を追い詰めるため……。
まずは裏バニー界の頂点を目指します!!
鏡に映るほぼ全裸のわたくしに向かって、固く誓います。
……それにしても。
先ほど覗いたホールは、まるで舞踏会でも開かれているかのような賑わいでしたわね。
あれほどの殿方たちの前に、この姿で……。
…………。
……もう少しだけ、鏡の前で練習してから参りましょうか。

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